yukemuriのブログ

コント(掌編小説),いろはカルタ随想、江戸川柳色は匂へ、花かるた色は匂へ、趣味の5・7・5アラカルト俳句と川柳。

新しく「江戸を見れば」265年の整理に取り組んでいます。

コント 74   まちがい電話

「もしもし、・・・・・私、生きてますかねえ。」
「ハイ、立派に生きています。」


「ありがとうございます。受付の河津さんいますか。」
「まちがい電話だと思います。局番違いで、私のうちは66局でたぶんあなたがお掛けの病院は67局です。近頃、よく局番違いの電話がかかってきます。」
「それは失礼いたしました。・・・あなたの言葉で元気が出てきました。ありがとうございました。」
「そうですか。それはよかったです。私は今年81歳になりました。」
「私は93歳になりました。あなたとは一回り違いですね。」


「今日はどうかしましたか。・・・」
「ハイ、近頃、目を覚ましますとしばらく何もわからなくなるんです。今日も生きているのかなあ。昨日も同じように生きていたんだろうなあ。そして、10年前も今日と同じ感覚で蘇ってくるのです。」


「立派に生きていますよ。とても参考になりました。・・・ときどきまちがい電話をしてください。」
「ありがとございます。何か生きているという実感が出てきました。」


 まちがい電話はそれで終わった。
 その後、93歳のご婦人からのまちがい電話は一度もかかってこなかった。


 私も90歳代に入ると自分が生きているのか死んでいるのか分からないそんな自分を生きているのであろうか。たぶんそうだろう。


 今日はすばらしい「まちがい電話」をありがとう。


×

非ログインユーザーとして返信する

あと 2000文字

※は必須項目です。